2015-03-09

代用字 ~歴史的假名遣ひを書かう 番外篇

歷史的假名遣ひではないのですが、意外に知られてゐない問題を少々。その問題とは「代用字による書き換へ」である。
昭和三一年に國語審議會が當用漢字表にない漢字を含んで構成されてゐる漢語について、同音の別の漢字に書き換へる爲の指針を定めた。これが「代用字による書き換へ」である。何が問題か?ちま/\と言葉尻を捉へて文句を言ひたいのではない。例を擧げて考へてみよう。

(例1) 沈殿(讀み:ちんでん 意味:溶液中に混じつてゐる微小固體が底に沈んでたまること。)
この字の書き換へは「殿」である。元の漢字は「澱」。意味は、水底に溜まつたもの、あるひはよどみである。然し、「殿」は相手に對する敬稱や大きくて立派な建物と言ふ意味である。從つて、「沈澱」は沈んで淀んでゐるのだが、「沈殿」と言ふことは、バカ殿が溺れてゐる滑稽な光景と言ふ意味になる。これををかしいと言はずして何がをかしいのだらうか。
(例2) 凶器(讀み:きようき 意味:人を殺傷するために用いられる道具) 本來は、「兇器」と書いた。「兇」は人を傷つけると言ふ意味であるが、「凶」は 作物が實らない、あるひは運が惡い、不吉と言ふ意味である。「兇器」は人を傷つける道具であるが、「凶器」は作物が實らない農耕具とでも言ひませうか。

そのほか、「褪色」は色があせることだが、「退色」では後退する色と言ふ變な言葉である。擧げ出したらきりがない。
最もひどいのはなんと言つても、「障害者」と言ふ字である。元々は「障碍」と書いた。「妨げがあり差し障る」と言ふ意味であるが、「障害」では「妨げがあつて災ひをなす」と言ふ意味を書いてゐることになる。「障害者」と言ふ字は、これは酷い、酷すぎる字である。國語協議會に出席した面々はほんたうに國語の專門家だつたのだらうか。かやうな差別的な字を指針としてゐるのは、殆ど人間の所業とは思へない。
これ以外にも多數あるだが、今こゝで全部載せることは投稿が冗長になるので割愛する。いづれの機會で、揭示してみたいと思ひます。因みに、橘右はIMEの辭書に登錄してあるので、基本的には代用字を使はず文を書いてゐると思ふ。

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2015-01-30

歴史的假名遣ひを書かう その9

今囘で歷史的假名遣ひは最後となります。

■字音假名遣ひ
簡單に言ふと漢字の音讀みになりませう。ご存じの通り、日本は古代支那から文字を輸入して使用した過去があります。上代の人は驚くことに、漢字の音を日本語の發音に合はせて文字を書いてゐました。從つて、漢字の持つ意味を無視して音だけ合はせて書いてゐます。驚くべき馬鹿さ加減と言ふのかそれとも音感に優れた偉業なのか、それをどちらか決めるは野暮でせう。因みに、これが所謂「萬葉假名」と言ひます。
このやうにして、我が國は支那から字を導入し、やがて、獨自の文字である「平假名」、「片假名」が生まれることになるのですが、元々上代の大和民族が發音できなかつた支那の音もありまして、それを書くのが簡單に言ふと字音假名遣ひとなります。
そのため、「カ」は和語では「か」と書きますが、「火(發音:カ)」は「くわ」と書きます。例を擧げると「漫畫」は「まんぐわ」となる譯です。
さて、この字音假名遣ひですが、これを歷史的假名遣ひとせずに無視してしまふべきと言ふ意見もあります。やうは、「假名遣ひ」つまり書き方ではなく、外來語に假名を便宜上付けてゐるに過ぎないと言ふ意見です。確かに、的を射た意見だと思ひます。因みに、橘右はこの意見に贊同はしつゝも字音假名遣ひで書かうと心掛けてゐる天邪鬼な次第です。出來て敢へてしないと出來ないからしないのとは異なると思つてゐるからです。
字音假名遣ひは漢字とその假名遣ひを覺えるほかはありません。「ゐ」、「ゑ」、「を」等のわ行や「くわ」の「カ」の音、拗音などが對象となります。
基本的には漢字に振り假名を打つとき以外は使ふことが稀です。もし振り假名を打つ場合は、面倒だが國語辭典を引いて字音を書くか、「字音には拘らない」と宣言して無視するかでせうか。因みに三省堂の「新明解」には字音が載つてゐます。古語辭典等やネットで字音假名遣ひ表もありますので、それらを見ながらと言ふのも近道だと思ひます。本投稿では字音假名遣ひの表を上げたりはぜずにこの邊で終はりにしたと思ひます。

2015-01-26

歴史的假名遣ひを書かう その8

■「ズ・ヅ」について多くは「ず」と書く。但し、以下の語は例外的に「づ」と書く。

あづける(預ける) あづき(小豆) あづさ(梓) あづま(東 )いかづち(雷) いたづら(惡戲) いづみ(泉) いづも(出雲) いづれ(何れ )いなづま(稻妻) うづ(渦) うづく(疼く) うづくまる(蹲る) うづめる(埋める )うづら(鶉 )うはづる(上ずる) おとづれる(訪れる) おのづから(自づから) かかづらふ(拘づらふ) かけづる(駆けづる) かたづ(固唾 かづける(被ける) かはづ(蛙) きづく(築く) きづま(氣褄) くづ(屑) くづれる(崩れる) けづる(削る) さづける(授ける) さへづる(囀る) しづか(靜か) たづき(方便) たづさはる(携はる) なづむ(泥む) なづな(薺) まなづ(鯰) はづれる(外れる) はづかしい(恥づかしい) まづ(先づ) まづい(拙い) まづしい(貧しい) みづ(水) みづから(自ら) めづらしい(珍しい) もづく(水雲) ゆづる(譲る) よろづ(萬) わづか(僅か) わづらふ(患ふ)

※こちらも「ジ・ヂ」と同じく暗記が基本ですが、まあ、漢字で書くはうが多いと思ひますので、日常的に意識することはないのかもしれません。
因みに、稟議などでよく「先づ」は注意されます。これは假名で書くことも多いですから、ついうつかり「まづは」なんて書いてしまひます。

2015-01-25

歴史的假名遣ひを書かう その7

■「ジ・ヂ」について多くは「じ」と書く。但し、以下の語は例外的に「ぢ」と書く。

あぢ(味 )あぢ(鰺) あぢきない(味気ない )あぢさゐ(紫陽花) いくぢない(意気地ない) いぢける いぢめる(虐める) いじらしい いぢる(弄る) うぢ(氏) うぢ(宇治) おぢる(怖ぢる) かうぢ(麴) かぢ(舵) かぢ(梶) かぢ(鍛冶) くぢら(鯨) けぢめ こぢる(抉る) しめぢ(濕地、占地) すぢ(筋) ぢか(直) ぢく(軸) ぢぢ(爺) ぢみ(地味) ぢみち(地道) ・・・ぢや どぢやう(泥鰌) とぢる(閉ぢる) とぢる(綴ぢる) なめくぢ(蛞蝓) なんぢ(汝) ねぢる(捻ぢる) はぢる(恥ぢる) ひぢ(肘) ふぢ(藤) もぢる(捩る) もみぢ(紅葉) やそぢ(八十歳) やぢうま(野次馬) よぢる(攀じる) わらぢ(草鞋) をぢ(叔父)

※基本的には暗記するしかないけれども、漢字で「地」は「ぢ」になる。鼻血の場合、「はなぢ」と書き「はなじ」と書かないのと同じである。「路地」は「ろぢ」と書くのが正しい筈。「ろじ」と書く現代仮名遣ひは、「はなぢ」と「ろじ」で二重基準を持つてゐる間違つた書き方である。

2015-01-21

歴史的假名遣ひを書かう その6

■拗音、拗長音について

A)「ウ列」の拗音+「う」は「い列+うorふ」になる(きゅう → きう など)

きうり(胡瓜) じふ(十) ~ちふ(と言ふの意) はにふ(埴生) ひうが(日向) かりうど(狩人)

B)「オ列」の拗音+「ウ」は「エ列+うorふ」になる(きょう → けふ など)

けふ(今日) ~でせう/~ませう てふ(蝶) てふちよ(蝶々) てうづ(手水) てうな(手斧) へう(豹) へうたん(瓢箪) めうが(茗荷) めうと(夫婦)

C)例外的に「オ列」の拗音+「ウ」が「ア列の拗音+うorふ」になる語がある(ききょう → ききやう など)

ききやう(桔梗) しやうが(生姜) しやうがない しやうぶ(菖蒲) どぢやう(泥鰌) いちやう(銀杏) ちやうど(丁度)
※桔梗は三代集(古今・後撰・拾遺)の頃には「きちかう」と書かれてゐる。古くは朝顔(あさがほ)と勘違ひされてゐた節がある。もしかしたら「きちかう」と「きゝやう」は別の花であつたのかもしれない。
「もうどうにもかうにもやりやうがない」と言ふ意味の「ショウガナイ」は「しやうがない」。「しよう」か「しやう」か難易度が高い。

橘右的には苦手意識のある拗音。確りした國語辭典には歴史的仮名遣ひが載つてゐますので、それを見ながら感覺で覺えました。
プロフィール

橘右近大夫

Author:橘右近大夫
畿內の寺社佛閣を中心に、おでかけトロ&クロとお參りしたときの旅日記を綴つてゐます。

旅日記の外に、日頃思ふことなどを書くことがあります。
あくまでも個人的な日記であり、專門的・學術的な正確さを擔保するものではありません。

漢字は正字(康熙字典體)にて書かうとしてをります。どのやうな環境でも讀めるやうに氣を附けてをりますが、環境により漢字が表示されない場合があります。
假名遣ひについて、原文を引用する以外は歷史的假名遣ひで書きます。

※ご意見、ご指摘は建設的、友好的なものに限り受け付けます。建設的友好的なコメントは更新の勵みになりますので、よろしくお願ひします。
但し、間違ひを指摘し、批難するだけのコメントは承認致しませんので、ご諒承ください。しつこいと投稿禁止や閲覧禁止をする場合があります。

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