2014-10-15

不動寺(撫子)

眞言宗醍醐派に屬するお寺で、山號を長瀞山、寺號を五大院不動寺と稱す。本尊は、大日大聖不動明王である。撫子ももう時期が終はつてゐて、境內には疎らにしか咲いてゐない狀況であつた、殘念である。境內には撫子以外に、尾花・葛・桔梗・藤袴・女郞花・萩と七草が全部咲いてゐるではないか。まあお寺巡りも樂のしいものなので、七草寺全部廻つたはうがよいとは思ひます。

我のみやあはれと思はむきりぎりす 鳴く夕影の大和撫子(古今集244、秋歌上:素性法師)

私だけがいとおしいと思うのだろうか、螽斯の鳴く夕影に咲く撫子の花をと言ふ意味の歌。撫子の花は小ぶりで纖細な感じのする花だと思ふ。

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長月貮拾貮日(陰曆) 橘右

2014-10-14

眞性寺(女郞花)

眞言宗智山派に屬するお寺で、山號を眞性寺と言ふ。本尊は不動明王。ここは女郞花のお寺である。女郞花は、葛と違つてちやうど見ごろで、境內一面に黃色い花が咲いてゐた。中に白い花があり、それは男郞花と言ふらしい。
女郞花を詠つた歌は秋の七草の中で最も多く拾三首あつた。ちなみに萩は九首である。拾三首の歌から三首を撰んでご紹介しませう。

秋の野に宿りはすべし女郞花 名をむつまじみ旅ならなくに(古今集228、秋歌上:藤原敏行)
女郞花吹きすぎてくる秋風は 目には見えねど香こそしるけれ(古今集234、秋歌上:凡河內躬恆)
ひとりのみながむるよりは女郞花 我が住む宿に植ゑて見ましを(古今集236、秋歌上:壬生忠岑)

敏行の歌は旅の途中であるが女郞花と言ふ名を聞くと愛おしくなるので秋の野の宿に泊まるしかないなと言つてゐる。女郞花の字の「女」と言ふところが歌を詠むポイントとなつてをり、敏行以外でも花山僧正も詠んでゐる。躬恆の歌は女郞花の香を詠つたもので、ここ眞性寺でも女郞花の良い香がしてゐた。忠岑の歌は、女郞花の花を見てゐるのならいつそ家に持ち歸つて植ゑやうかと言ふ意味で、花を家でも鑑賞したいと言ふのとやはり女性にかけてゐる。
女郞花。黃色い愛らしい花かその名か、いづれが人々を魅了し歌を詠ませたのだらうか。

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▼こちらが男郎花
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長月貮拾壹日(陰曆) 橘右

2014-10-13

法善寺(藤袴)

臨濟宗妙心寺派に屬するお寺で、山號を金嶽山と稱す。本尊は阿彌陀如來である。ここは藤袴が咲く七草寺。境內には多くの枝垂れ櫻の木があつたので、藤袴の季節もよいが櫻の頃はとても美しいのかなと思つた。
藤袴は古今集で三首歌がある。いづれも香を詠んでゐるが、法善寺の境內ではあまり香を感じられなかつた。境內の說明書きには乾燥させると良い香がするとあつた。まあ、和歌は俳句と違ひ寫實的なことを重視するものではないので、實際に香がなくても詠める。

なに人か來て脫ぎかけし藤ばかま 來る秋ごとに野邊を匂はす(古今集239、秋歌上:藤原敏行)
宿りせし人の形見か藤ばかま 忘られがたき 香に匂ひつゝ(古今集240、秋歌上:紀貫之)
主知らぬ香こそ匂へれ秋の野に たが脫ぎかけし藤ばかまぞも(古今集241、秋歌上:素性法師)

三つの歌はいづれも藤袴と言ふ名の袴の部分にも着目し、袴を脫ぐと言ふ構圖を取り入れてゐる。敏行も貫之も素性法師もいずれも三拾六歌仙だから歌が上手いな。

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長月貮拾日(陰曆) 橘右

2014-10-12

多寳寺(桔梗)

眞言宗智山派に屬するお寺で、山號を金玉山、寺號を觀音院多寶寺と稱す。本尊は、十一面觀音菩薩。ここは桔梗のお寺。桔梗については、度々當ブログでもご紹介したことがあり、解つてはゐるが、廬山寺や天得院などと比べると○○○な感じは否めない。但し、境內の外の畑に植ゑられてゐた桔梗群は新鮮であつた。
桔梗は、上代には朝貌と言ふ風に言はれてゐたさうだ。平安の頃には朝貌と桔梗は別として認識されてゐた。それはともかく、桔梗を詠んだ歌は少なく物名の卷に貫之が詠んだもの以外はなささうである。

秋ちかう野はなりにけり白露の おける草葉も色かはりゆく(古今集440、物名、きちかうの花:紀貫之)

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長月拾玖日(陰曆) 橘右

2014-10-11

洞昌院(萩)

眞言宗智山派に屬するお寺で、山號を不動山と稱す。正式な寺號は白山寺洞昌院と言ふ。本尊は不動明王。こちらは長瀞七草寺のうち、萩の寺となつてゐる。境內一面に赤や白の花を咲かせて見應えのあるお寺であつた。境內裏手は斜面がきつく登るのが大變だつたが、登つてみると景色がよく登つてよかつたなと思つた。萩を詠んだ歌は古今集に多く出てゐて秋の七草の中で女郞花に續いて多い。

秋萩にうらびれをればあしひきの 山下とよみ鹿の鳴くらむ(古今集216、秋歌上:讀人智らず)
秋萩をしがらみふせて鳴く鹿の 目には見えずて音のさやけさ(古今集217、秋歌上:讀人智らず)
秋萩の花咲きにけり高砂の 尾上の鹿は今や鳴くらむ(古今集218、秋歌上:藤原敏行)
秋萩の古枝に咲ける花見れば もとの心は忘れざりけり(古今集219、秋歌上:凡河內躬恆)
秋萩の下葉色づく今よりや ひとりある人の いねがてにする(古今集220、秋歌上:讀人智らず)
鳴き渡る雁の淚や落ちつらむ 物思ふ宿の萩の上の露(古今集221、秋歌上:讀人智らず)
萩の露玉にぬかむととればけぬ  よし見む人は枝ながら見よ(古今集222、秋歌上:讀人智らず)
折りてみば落ちぞしぬべき秋萩の 枝もたわゝに置ける白露(古今集223、秋歌上:讀人智らず)
萩が花散るらむ小野の露霜に  濡れてをゆかむ小夜はふくとも(古今集224、秋歌上:讀人智らず)

古來より、秋を代表するやうな花として人々に捉えられてゐたのだらうか。

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長月拾捌日(陰曆) 橘右
プロフィール

橘右近大夫

Author:橘右近大夫
畿內の寺社佛閣を中心に、おでかけトロ&クロとお參りしたときの旅日記を綴つてゐます。

旅日記の外に、日頃思ふことなどを書くことがあります。
あくまでも個人的な日記であり、專門的・學術的な正確さを擔保するものではありません。

漢字は正字(康熙字典體)にて書かうとしてをります。どのやうな環境でも讀めるやうに氣を附けてをりますが、環境により漢字が表示されない場合があります。
假名遣ひについて、原文を引用する以外は歷史的假名遣ひで書きます。

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